ボウリング

ボーリング好きの吉行さん。

といっても、マイボール片手にボーリング場に訪れてプレーするわけではない、テレビでプロが 行うゲームを見るのだ。

すっかり専門用語を覚えてしまって、ちょっとした解説くらいはお手の物だったとか。


 ボウリングというゲームは、ルールもゲームの流れも単純である。しかし、単調すぎることはない。パーフェクトゲームは めったに出ないが、高得点への期待もある。
 つまり、軽く刺戟されながら、あとはテレビ画面にぼんやり身を委せていればいい。
 ボクシングも、シロウトにとってはそういう番組の一つである。


『日日すれすれ』より



北海道

吉行さんは『札幌夫人』を書くため、札幌に滞在していた時期があった。

夜は当然「すすきの」で楽しむ。

「味の小骨が刺さって困った」という話をしたところ、ホテルに来るはずだった美人には逃げられ、すすきのでは「変態」 ということになってしまった吉行さん・・・。

2年で4、5回、北海道へ。
「龍鳳」というラーメン屋が旨い、とお気に入りのご様子でした。



ホテル

30代の鞄ひとつの生活時代から、ホテルをかなりの頻度で使ってきた吉行さん。

 

では、どういったホテルを利用してきたかというと、 文士のホテルとして有名な御茶ノ水の山の上ホテル、帝国ホテル、ニューオータニ、オークラ、と一流どころは抑えてある。

 

しかし、すべて生活するか原稿を書くかのどちらかが目的であり、女性を連れてという使い方はしなかったという。

ホテルを使い慣れている吉行さんではあるが、ホテルにいると疲れる、とも。

 

理由は「千室に余る部屋に閉じこもっている人間たちの 無音の気配が、大きなコンクリートの建造物にただよっていて、それがカラダ(身+区のメが品)に つたわってくるのではないか」(『街角の煙草屋までの旅』)とのこと。

 

心の動き方が、いかにも吉行さんですね。

このホテルの中で、許しがたい事情から絶縁状を出したホテルがあるのだが、それはまた別の項で。





「骨まで愛して」ではないが、脂肪の下に存在する骨を愛した吉行さん。

女の子の手をとって自分のポケットにつっこんだときに 「音がした」と感じたり、鎖骨の美しさを好んだり。

肺の手術などで骨を切除などした場合、骨を捨てるのは何だかもったいない。

それならその自分の骨で耳掻きをつくって 女の子に配ってはどうだろうか、という想像をしたことも。

欲しい!という女性は、どのくらいいるのでしょう・・・知りたい気もします。



ポール・モーラン

批評家が、吉行さんが影響を受けた作家と書いたことがあったらしいが、吉行さん自身、モーランの作品を読んでいない、という。

父・エイスケさんとモーランの類似点から見ると、やはり父親からの遺伝的要素が濃かった、ということか。





 昔、感心した書物というのは、あまり読み返したくない。この数年のあいだに、義務的読書として幾つか読み返したが、 結果はあまり良くなかった。といって、失望したというほどではなく、なにか文句のつけたいようなところが目につく。

『石膏色と赤』より