理恵子

吉行理恵子。

 

1939年(昭和14)7月8日生まれ。
2006年(平成18)5月4日、逝去。享年66歳。


吉行さんの末の妹で、詩人であり作家の吉行理恵さん。

早稲田大学文学部国文科卒業。
1981年(昭和56)に『小さな貴婦人』で第85回芥川賞を受賞。

吉行さんとの共通点といえば、まず思い浮かぶのは文字。原稿用紙に書かれた字が、吉行さんのとそっくりだったとか。
理恵さんが吉行さんの字を見て真似たということは考えにくく、吉行さんは「遺伝子のせい」と言っている。

そして次に、猫が好きだということ。

ふたりとも飼い猫への思いを描いた作品がいくつかある。

度合いはというと理恵さんに軍配があがりそうで、吉行さんは 「結婚もせずに猫と暮らしている」とエッセイに。

繊細な感覚の中に、鋭さや不器用さやあどけなさが交錯していくような不思議な透明な文章です。

ちなみに、理恵さんが芥川賞を受賞した年、吉行さんは同賞の選考委員だった。

が、その回だけは選考委員を辞退したとか。

そんな状況になるなんて、うーん、本当にすごい兄妹ですね。



理不尽な

吉行さんの、最後の言葉だったといわれる。

何が理不尽だったのか。
病気を飼い馴らしている状態、その体、敏感すぎる生理。

いろいろ考えられますが、今後の研究テーマのひとつといえるでしょう。



旅行

小学生の頃から遠出が好きで、中学の頃は日曜に友人たちと旅行をしていたという吉行さん。

特筆すべきは、吉行さんの不思議な事柄や奇怪な情景に出会うことができる才能であろうか。

 このことを、私は一種先天的才能とおもっている。つまり、そういう事柄を磁石のように引き寄せる才能である。

『街角の煙草屋までの旅』より


そんな才能を持っていて旅がつまらないはずがない。

はたして吉行さんは旅行が好きであった。

 

引き寄せられた不思議な事柄を 期待する気持と旅行の依頼が重なったときに、旅に出ると言っている。

が、好きという気持ちに体力が追いつかず、どんどん億劫になっていったようだ。

旅行が好きなのに思うようにできない、 そんな苛立ちから旅行かばんをいくつも買った、とも考えられそうである。